共励保育園訪問記 その2 (平成19年11月14日見学)
2.共励保育園の取り組み A.問題の背景 長田理事長がご指摘されている「保育園のパラドックス」とは、保育園が家庭の役割を代替えすればするほど、家庭は本来もたなくてはならない力を失っていく-ことを指しています。 85年プラザ合意以来、規制緩和や市場競争原理による子育ての外注化が進みました。 行政も社会も保育園に対し、ただ預ければよいという認識しか持たず、母親を労働に駆り立てる補助機関のように見ているようです。しかし子育てにおける家庭(親)の重要性と、保育園の果たす機能や現在の保育士のおかれている状況をもっと考えなければなりません。 保育士1人が見ることの出来る子供の人数は(何歳児かにもよるが)限られています。しかし国や自治体の施策はそれとは反するようなもの(長時間保育等)を取っています。 必要な人に手を差し伸べない、と言っているのではなく、特別な保育対策を一般化したり、必要のない人にまで需要を喚起させてしまう施策は問題があるといえましょう。 B.保育園のあり方 保育園は家庭の代替えにはなれません。しかし保育園は集団として子供達を保育・教育し、働く親の応援をしながら、親と子の絆を深め、親も育つ機会を提供できる-そんな機能を持っています。そこを活用すべきなのです。 C.共励保育園の取り組み ①親御さんの参加 共励保育園はこうした考えのもと、子供の親と協力しながら、主体的で意欲的な子供を育てることを目標としています。 よって共励保育園に子供を預ける親御さんは、保育園の行事への参加、保育参観、個人面談等に参加することに賛同しなければなりません。 私達が訪ねた時は保育参観日で、2歳児の「りすさんクラス」では絵本の読み聞かせを親御さんが交代で行っていました。 ![]() その教室内には可愛いお人形がきれいな箱に入れられて何体もありました。それはお母さん達が手作りの(おそらくお母さんに似せた)お人形でした。子供達はその人形をおぶって登園し、おぶって家に帰ります。3歳までは女の子は勿論のこと、男の子にとってもその人形は「心の杖」(=心の支え)になるとのことです。 ②総合保育(ごっこ遊び)-共励保育園の特色 「総合保育」とは、1年間というスパンで「ごっこ遊び」を中心に物語を組み立て、その中で子供達の能力を育てていくものです。 子供達は物語のさまざまな出来事の中で、「数」「言葉」「絵画」「造形」「基礎的な技能」「感性」など、見る力、聞く力、感じる力、考える力、判断する力、相手に伝える力、表現する力などを身につけていきます。 訪問した日もこの「ごっこ遊び」の最中でした。ストーリーとしては“〇〇さんの病気を治すためのキノコ採りの冒険の旅”で、道中、歌やお遊戯をし、時に障害を乗り越え問題解決しながらキノコを採りに行くのです。 子供達はストーリーに従い、場面設定してある教室から教室(ときに廊下)へと進んでいきます。保育士さん達は上手に子供達を誘導し、子供達は楽しみながら学んでいくのです。保育参観している親御さん達は、子供を見守り子供と一緒に体を動かして参加されていました。 ![]() ![]() 総合保育にはこれまで「れたぁ」(4歳児向)、「はなまるラジオ」(5歳児向)、「ぞうぐみスター誕生」(5歳児向)など、これまで実践されたテーマは150以上になります(詳しくは共励保育園ホームページ http://www.kyorei.ed.jpをご覧下さい)。 長田理事長は「ごっこ遊び・劇遊びの理論的背景」として「子供たちの発達と自分づくり」という図を作っておられます。詳細な図であり、ここでは説明しつくせませんが、0~6歳までの発達過程で「人との関わり」「自分づくり」「ことば」「物や外界との関わり」「身体的発達の特徴」において生理的そして高次の欲求が満たされ、知性が育ち、自我形成されていく過程に「ごっこ遊び」がどのように作用し効果をもたらすかが分かるようになっています。 ③親の学び DVDで、運動会や遠足の様子、発表会の様子等も拝見しました。子供達、親御さん共に生き生きと輝いていました。 「ごっこ遊び」はまた親の学びでもあります。物語の中で使う物を母親が手作りしたり、子供と一緒に参加したりします。保育園は親と子供が離れている時間は長いのですが、ここではその分、親の作った物が子供の傍にあること、そして親が参加する中で親子の絆を築けるよう工夫がしてあります。 親御さんの感想の中で「一番育ててもらったのは私達だった」というのがありました。親学という学問ではなく、現場で子供達の明るくて楽しそうな顔を見て幸せを感じながら親として学んでいくのです。 ④食 ご案内、ご説明を頂いた後、園児達と同じ昼食(給食)を戴きましたが、大変美味しいものでした。バランスがとれ見た目も楽しく、子供達も毎日喜んで食べていることと思いました。 最後に 「保育園は家庭の代替えにはなれない。しかし保育園は集団として子供達を保育・教育し、働く親の応援をしながら、親と子の絆を強め、親も育つ機会を提供できる」そういう機能を持っているという考えは、私達がこれまで保育園に抱いていたイメージとは違っていました。 「家庭の代わりにはなれない」という謙虚な姿勢、その上で親御さんの参加を積極的に進め、親の意識改革をし、親子の絆を深める場としての保育園を推進されていることが分かりました。園舎内を説明されながらカメラ(かなり良さそうな)を持ち、子供達の素晴らしい表情を逃すまいと写真を撮られていた長田理事長の姿が思い出されます。 子供達にとって良好な家庭のあり方、保育園のあり方について学び、考えさせられた1日でした。 (共励保育園について詳しくはホームページ http://www.kyorei.ed.jpをご覧下さい)了 スポンサーサイト
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