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民法法定相続分規定「改正」への対応
既にご承知の通り、先般のいわゆる婚外子法定相続分の区別を「違憲」とした最高裁判決を受けて、現行非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする民法900条の規定に係る改正案が自民党法務部会の了承を得て、国会に提出されようとしています。
報道によれば、自民党内に家族の絆を守る特命委員会」を新たに設けるなどして、 配偶者を優遇する相続制度の導入など家族制度を維持する具体策を、1年をめどにまとめることを条件に改正案が了承されました。検討課題として
(1)配偶者が自宅に住む権利を保護する。
(2)配偶者の相続割合を拡大し、結果として嫡出子への相続が婚外子に比べて多い現行の仕組みを残す。

等が挙げられているとのことですが、ここで(2)で挙げられている配偶者の相続割合の拡大について考察してみたいと思います。
我国民法における配偶者の法定相続分は昭和50年代に、それまでの配偶者3分の1:子3分の2から、現行の配偶者2分の1:子2分の1に改正されています。ですから、仮に夫婦とその間の子供2人家族で夫が亡くなると、妻と子が相続人となり妻が2分の1、そして子(嫡出子)はそれぞれ2分の1×2分の1=4分の1ずつが法定相続分となります。例えば相続財産が全部で6,000万円相当とすれば、妻は3,000万円、子2人はそれぞれ1,500万円ずつの法定相続分となります。ここでもしも子の一人が相続後に出現した非嫡出子、いわゆる婚外子である場合、現行規定では妻とその間の子(嫡出子)が3,000万円+2,000万円、非嫡出子が1,000万円となります。しかし、この法定相続分に係る区別の規定が撤廃されてしまうと嫡出子・非嫡出子ともに同じ1,500万円ずつとなります。ここで考えなければならないのが我国における一般的な相続財産の中身です。相続の対象となる財産には土地建物である不動産、いろいろな動産或いは預貯金等ですが、富裕な特権層でないごく一般の家庭ではその唯一大部分の財産が自宅、すなわち夫婦家族が協力して家計をやりくりし、ローンの返済を終えて残った住宅やマンション等がほとんどすべて、というケースが多いのではないでしょうか。この場合には、権利を主張してきた非嫡出子に対して、家族側がその相続分を金銭で支払い自宅に住み続けることになりますが、もし現行規定が撤廃されてしまったら、夫の他界後に突然出現してきた非嫡出子への遺産分割のために、自宅を売却して充てなければならないケースが増加すること、すなわち長年相続財産の形成に寄与してきた妻や子(嫡出子)の基本的な権利が脅かされてしまう可能性が高まってしまうことになります。こうしたことを防ぎ、家族の絆や権利を維持する代替案として、上記の(1)(2)が出てきたものと思われますが、ここで外国家族法規定、フランスの相続規定から配偶者・家族の保護についてみてみましょう。
フランスは我国と異なり、全出生数の半数以上がいわゆる婚外子であり圧倒的に高い比率となっていることはご承知だと思います。同国では2001年に法改正が行われ、嫡出子・非嫡出子の相続分の区別が撤廃されましたが、同時に配偶者・家族保護の規定を設けているようです。すなわち、配偶者の法定相続分は我国同様に2分の1ですが、これに加えて配偶者は残りの2分の1についても、子と同様に相続分が認められることになっています。具体的には妻と嫡出子と非嫡出子それぞれ一人ずつのケースで、妻は先ず配偶者としての2分の1を取得し、さらに残りの半分について二人の子と同等の権利を法定相続分として認められることになります。ですから上記相続財産が6,000万円なら妻が自身の2分の1と更に2分の1×3分の1である6分の1を加えた合計6分の4=3分の2が法定相続分となり、残りについて嫡出子・非嫡出子の区別なく6分の1ずつ相続するというものです。このように配偶者の権利を拡大することで、長い期間でみればその直系である嫡出子がその母の増加分6分の1をも相続することになり、結果として嫡出子・家族の権利が保護されることになります。
このフランス家族法の例でもいわば間接的に嫡出子の権利を保護できることになりますが、現在でも生まれてくる子の約98%が嫡出子であり、また最近の調査でも国民の多くは現行民法の「改正」を望んではいない我国の状況に鑑み、子が全て嫡出子の場合と非嫡出子がいる場合それぞれに対応する規定を考えるべきではないでしょうか。
すなわち、妻と子(嫡出子)が相続人である場合には現行法と同様に妻と子全部でそれぞれ2分の1ずつの法定相続分とし、別に非嫡出子がいる場合には、フランス等の場合と同様に配偶者に相続分を上乗せする形で、例えば妻3分の2、嫡出子・非嫡出子とも6分の1ずつとすることを検討してはいかがかと思われます。これにより、嫡出・非嫡出を問わず、法定相続分は「平等」を担保しつつ、多くの国民の意思である法律婚、家族重視の考えをもより明確に法文化することになるように思います。
十分な国民的議論もないままに拙速な「改正」などもってのほかですが、最悪でも家族保護のための規定を併存させるよう、これからも働きかけていくことが必要です。
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【 2013/11/12 21:15 】

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